「最強!野球団」の伏線・考察・見どころについて解説します。
最強!野球団の見どころ
日本の野球ファンとは対照的に韓国野球ファンは2023年WBCの韓国代表のあまりのダメさにガッカリしているとばかり思っていたのだが、2022年からオンエアされていたこの規格外の野球番組「最強!野球団」に熱狂していたようだ。
韓国プロ野球界のレジェントたちが、最強チームを目指し、次々と韓国野球界の強豪チームと戦っていく野球バトル番組なのだが、選手同士の会話や実況と解説のやりとりなどバラエティの要素もふんだんにあり、ガチ野球バトルとバラエティが融合した今までに見たことのない魅力的なハイブリッドな作品となっている。
さらに作品制作のスケールがものすごい。制作スタッフ総勢233名、試合の実況にはチョン・ヨンゴム、解説には元メジャーリーガー、キム・ソヌ。
試合中継用のカメラ台数は51台。ドローンカメラ、クレーンカメラ、無人カー・カメラまで導入し、プロ野球中継以上に野球バトルの醍醐味を伝える。
チーム名は最強モンスターズ。当初メンバーには2008年北京オリンピック野球の金メダリストで韓国の国民的打者であり、千葉ロッテマリーンズ、読売ジャイアンツ、オリックス・バッファローズでもプレイをした日本人にもお馴染みのイ・スン・ヨプを監督に韓国プロ野球史上最高安打記録2504安打のパク・ヨンテク、2008年北京オリンピック野球、2015年WBCプレミアム12金メダリストのチョン・グヌ、2008年北京オリンピック野球金メダリスト、イ・テックン、ソン・スンジュン、チョン・ウォンサム、スローボールの美学、ユ・ヒグァンなど韓国プロ野球界のレジェンドたち11名に韓国独立リーグに在籍する選手1名と大学生選手2名を加えた14名が選ばれた。
そして対戦成績勝率7割、10敗したらその時点で番組打ち切り、成績不振者は契約解除という厳しい条件が課せられ、2022年、春、最強モンスターズが始動する。
どんな相手と戦うのかが最大の関心だったが、初戦はメジャーも注目する157K投手シム・ジュンソク擁する高校野球の強豪、徳寿(トクス)高校。
レジェントと韓国野球の未来との激突がここに実現する。
レジェンドといえばすごいが、しかし野球である引退した選手がどこまでやれるのかと思ったが、9対3、11対1の2戦2勝で見事勝利する。
さらに高校野球の強豪、沖岩(チュンアム)高校、北一(プギル)高校、慶南(キョンナム)高校、大学野球の強豪、東義(トンイ)大学に挑んでいく最強モンスターズ。
結果は10戦、8勝2敗。驚くべき結果を残すレジェンドたち。その裏にはレジェントたちの努力があった。
初戦では走るたびにハァハァと息を切らしていたレジェントがグラウンドを疾走し、現役時とは全く別人のような投球をしていたレジェントが現役時に近づくような球速でバッターに立ち向かう。
全てのレジェントたちが成長し自信を取り戻していた。
この間にメンバーも補強されていた。
一人は千葉ロッテマリーンズでもプレイをし、2015年プレミア12の日韓戦の先発ピッチャー、イ・デウン、そしてもう一人はキム・ムンホ。前半戦のクライマックスはU18韓国代表との試合だ。
高校野球の強豪チームには勝利してきたが、高校野球とのスター軍団との決戦。
そしてこの試合は初の観覧デー。高尺(コチョク )スカイドームにはレジェンドたちの現役時代のユニフォームを着たファンやプラカードを手に応援するファン、レジェンドたちの名前を呼ぶファンなど16,000人以上が詰めかけた。
その数は最強モンスターズの人気の高さをそのまま物語っていた。16,000人のファンが見つめる中、試合は1対2のまま5回を終了、U18韓国代表1点リードのまま後半に入っていく。
そしてU18韓国代表が6回の表、4番キム・ボムソクのホームランなどで2点をあげ、1対4と最強モンスターズを突き放す。
しかし最強モンスターズは7回の裏、フォアボールとデッドボールでノーアウト、ランナー1、2塁のチャンス。
さらにパスボールでランナーがそれぞれ進塁し、ノーアウト、ランナー2、3塁とチャンスを広げるが、ボテボテのセカンドゴロの間の1点だけに終わり、スコアは2対4。
8回表、U18韓国代表はさらに2点を追加。2対6とまた4点差に。
しかし最強モンスターズもその裏1点を返し、3点差で9回裏、最後の攻撃を迎える。
先頭打者、キム・ムンホが意表を突くセーフティーハンドで出塁。代打、スヒョンはボテボテの1塁ゴロ。
ワンナウト2塁に。
韓国の国民的打者、監督のイ・スン・ヨプが素振りを始める中、続くチョン・グヌはライトに抜けそうな惜しいセカンドライナー。
ツーアウト2塁の状況に。後のなくなった最強モンスターズ。
バッターはチョン・ソンフン。ここでU18韓国代表監督が粋な演出をする。
チョン・ソンフンを申告敬遠。
ツーアウト2塁、1塁。ホームランが出れば同点、バッターは韓国の国民的打者、イ・スン・ヨプの場面を作り出す。
イ・スン・ヨプのホームランを信じ祈るファンたち。
熱いイ・スン・ヨプコールが響く中、高尺(コチョク )スカイドームのボルテージが頂点に達する。
注目の初球、イ・スン・ヨプは迷わず渾身の力でバットを振る。ファーストファールフライでゲームセット。
3対6でU18韓国代表チームの勝利に終わる。その後、最強モンスターズは韓国独立リーグのマクバイス、ミラクルと対戦、そして仁荷(インハ)大学戦を迎える。
この試合は解説の元メジャーリーガーのキム・ソヌが2014年4月11日以来の3076日ぶりに先発でマウンドに上がるという熱い試合。
毎試合、最強モンスターズの解説を担当していた元メジャーリーガー、キム・ソヌの心にも再び、マウンドへ上がるという気持ちが芽生えていたのだった。
さらに最強モンスターズの戦いが続く中、監督イ・スン・ヨプの韓国プロ野球、斗山ベアーズ監督就任が決定し、釜山(ブサン)高校戦を最後に退団が決定する。
最強モンスターズは監督不在のままパク・ヨンテクを監督代行に初めてのプロ野球球団、NCダイノス2軍戦を迎えることになるのだが1勝1敗でこれをなんとか乗り切り、ここまでの全対戦成績は18勝6敗に。
そして新監督に韓国プロ野球界でなんどもチームを優勝に導いた野球の神様、野神キム・ソングンが就任。
さらに引退したばかりの韓国の大砲、イ・デホがチームに入団する。
オリックス・バッファローズ、ソフトバンク・ホークスでも活躍したイ・デホは日本人にも説明のいらないまさに韓国野球界のレジェンドの中のレジェンドであるが、監督に就任した野球の神様、野神キム・ソングンも日本プロ野球界と深い関係がある人物だ。
彼は日本で生まれ、高校まで日本で過ごした。その後、韓国に渡り韓国実業団チームの投手として活躍する。
また引退後は千葉ロッテマリーンズのコーチや工藤監督時代の福岡ソフトバンクホークスでは監督アドバイザーなども経験している。
こちらも名将中の名将である。
この新体制で円光(ウォングァン)大学戦、韓一長神(ハルチャンシン)大学戦と対戦。
円光(ウォングァン)大学には2戦2勝、韓一長神(ハルチャンシン)大学には1勝1敗の成績で28戦、21勝7敗の成績で最強モンスターズは最終戦を迎えることとなる。
最終戦は最強モンスターズ初代監督イ・スン・ヨプ率いる斗山ベアーズの2軍が相手となる。
この最終戦も観戦デーであったが、25,000枚のチケットが1分で完売という熱狂ぶり。
韓国での最強モンスターズの人気はプロ野球のチームをすでに凌駕しているとも言える。
斗山ベアーズは2軍のはずだが、監督イ・スン・ヨプは韓国代表ギャンミンを始め1軍でも活躍する選手を起用し、勝利にこだわる。
対する最強モンスターズは先発にここまで9勝1敗のスローの美学ユ・ヒグァン、4番には韓国の大砲、イ・デホを起用。
試合は1回の表、最強モンスターズがイ・デホコールがスタジアムでこだまする中、韓国の大砲、イ・デホのタイムリー2塁打で1点を先制。
その裏、斗山ベアーズも1点を返し振り出しに。
さらに4回の表、最強モンスターズが2点を追加し3対1にするが、斗山ベアーズも5回の裏に2点を追加し、再び同点に。
そしてイ・デウンの好投もあり同点のまま8回の裏の斗山ベアーズの攻撃を迎える。
この試合まで防御率1.66のイ・デウンのピッチングはまさに現役時代を彷彿とさせた。
イ・デウン続投のまま8回の裏の斗山ベアーズの攻撃。
先頭打者の3塁ゴロをサードが弾き内野安打で出塁。
続くバッターのあたりは1塁前のボテボテの当たり、これをイ・デウンが処理できず、ノーアウト1、2塁のピンチに。続くバッターはセンターフライに打ち取るも2塁ランナーが3塁へタッチアップ。
ワンアウト1、3塁。ここで斗山ベアーズはスクイズを失敗するが、3塁ベースがガラ空きで3塁ランナーをアウトにできず、その間に1塁ランナーが2塁に進塁。
ワンナウト2、3塁の状況に。
そしてセンター前へ2点タイムリーヒット。
スコアは3対5、斗山ベアーズがこの試合で初めて先行する。
後続を断ち、2点差で最強モンスターズは最終回9回の表の攻撃を迎える。
追い詰められた最強モンスターズ。
9回の表の斗山ベアーズのマウンドには1軍で今シーズン(2022年シーズン)35試合に登板し3勝1敗の成績のイ・スンジュン。
斗山ベアーズ監督イ・スン・ヨプ万全の必勝体制である。
最強モンスターズの攻撃はソ・ドンウクから。
ソ・ドンウクがフォアボールを選び、出塁。
続くパク・チャニもフォアボール。
マウンドの斗山ベアーズ、イ・スンジュンは制球が全く定まらない状態。
ここで最強モンスターズ監督、野球の神様、野神キム・ソングンは代打に韓国野球史上最多安打打者、パク・ヨンテクを指名。
パク・ヨンテクの打球は1、2塁間を破りライト前に。
レジェンドがファンたちを魅了する。
ノーアウト満塁のチャンス、1打同点のチャンス。
そして打席にはチョン・グヌ。
最強モンスターズ中で一番信頼できるバッターだ。
しかし初球を狙うもショートゴロ。
ダブルプレーの間に1点を入れるもツーアウト3塁。あとアウトカウント一つでゲームセットの状況。
ここでバッターはイ・スン・ヨプが最強モンスターズ監督時代の不動の4番打者チョン・ウィユン。
スタンドの最強モンスターズファンの悲鳴のような応援。
チョン・ウィユンは2球で簡単にツーストライクと追い込まれる。
祈る最強モンスターズファン。
そしてチョン・ウィユンの打球はフラフラとライトライン側に上がる。
懸命にこのボールを追う斗山ベアーズのセカンドとライト。
しかしボールはセカンドとライトの間の落ちる。
これで3塁ランナーが帰って同点。
9回、最終回、ツーアウトまで追い詰められたレジェンドたちが信じられないようなドラマを生んだ。
試合は同点のまま、9回の裏の斗山ベアーズの攻撃を迎える。
最強モンスターズのマウンドにはソン・スンジュン。
先頭打者、俊足のユチャンがライト前にヒット。
続く打者はショートフライに打ち取るも、続くデハンの打席で1塁ランナー俊足のユチャンが盗塁に成功。
ワンナウトランナー2塁の状況に。
ここで申告敬遠を選択。
ワンナウトランナ1、2塁にして最強モンスターズはダブルプレーを狙うが、フルカウントからフォアボールに。
ワンナウト満塁の大ピンチに陥る。
ここで最強モンスターズはピッチャーをソン・スンジュンから去年引退したばかりでかつての新人王リリーフ左腕のオ・ジュウォンへスイッチ。
1点も与えられない緊迫した場面が始まる。
バッターボックスにはインテ。
初球はファール、2球目は外角のストライク。
ノーボール、ツーストライクとバッターを追い込んだオ・ジュウォン。
しかし緊張からか3球目、4球目、5球目と連続ボール。フルカウントに。
絶対絶命のレジェンドたち。
そしてフルカウントからの6球目はバックネットへのファール。
7球目も1塁線へのファール。
さらに8球目はライトへの鋭いファール。
そして9球目、オ・ジュウォンの投じたボールは外角低めへ、判定はボール。
この瞬間、押し出しで斗山ベアーズが勝利をもぎ取った。
この試合で最強モンスターズ、パート1の全試合が終了。
対戦成績は21勝8敗。
最強モンスターズに課せられた勝率7割を達成し、40歳代の韓国野球界のレジェンドたちは見事にその実力を証明した。
そして「最強!野球団」は2023年4月10日からパート2へと突入する。
今シーズンの最強モンスターズの目標もパート1同様、勝率7割。
10敗した時点で番組打ち切り。
パート2では31試合を予定。
初戦の相手はプロ野球チーム、KTウィズの2軍チームに決定。
一方で斗山ベアーズとの壮絶な最終戦終了後、レジェンドたちは球団との契約更改に臨み、球団は戦力補強のためのトライアウトを実施。
トライアウトには207名が集まり、中には159Kの速球で北京オリンピック金メダルに貢献したレジェンド、ハム・ギジュの姿や韓国女子野球代表のショート、パク・ジュアなどの姿があった。
さらにレジェンドたちは野神キム・ソングン監督、直接指導の現役顔負けのハードな練習に励みパート2の初戦のプロ野球チーム、KTウィズの2軍戦に備えていた。
この王の間にレジェンドたちはどこまで進化したのか、その活躍が注目される中、パート2の新体制も整い、いよいよ16,000人以上のファンが詰めかけた高尺(コチョク)スカイドームでの韓国プロ野球チーム、KTウィズの2軍チームとの戦いが始まろうとしていた。
しかし、この大事な初戦、先発メンバーから最強モンスターズ不動の4番と思われていたイ・デホが外れていた。
野神キム・ソングン監督の意図は何か。
そして最強モンスターズの先発はイ・デウン。
果たしてイ・デウンは古巣相手にどんなピッチングを見せるのか。
また、開幕を直前に控えたこの試合は、開幕1軍入りを狙うKTウィズの2軍チームの若手にとっては絶好のアピールのチャンスでもある。
そんな本気モードの試合で最強モンスターズのレジェンドたちはどんなプレイを見せるのだろうか。
いよいよプレイボール。
3回の裏、最強モンスターズの最初のチャンスが訪れた。
スクイズで1点を先制した最強モンスターズはワンナウト満塁のチャンスを迎え、打席にはチョン・ソンフン。チョン・ソンフンの打球はレフトスタンドへ。
オフの間、ハードなトレーニングを積み重ねた結果の満塁ホームランであった。
歓喜するファンたち。
またひとつ歴史が生まれた。
これで5対0。
先発のイ・デホも5回1/3イニングを投げ7三振という堂々たるピッチング。
試合は5回の裏に最強モンスターズが1点を加えて6対0のまま9回の表へ。
この回、KTウィズに2点を取られるも、KTウィズの反撃もここまで。
結果は6対2で最強モンスターズの勝利。
続く2戦目も韓国プロ野球チーム、SGランダースの2軍戦。
そして3戦目からは再び、韓国高校野球界の強豪、徽文(フィムン)高校、奨忠(チャンチュン)高校との対戦が続いていく。
最強モンスターズ、パート2はまだまだ始まったばかりだ。
この先、レジェンドたちは私たち野球ファンにどんなドラマを見せてくれるのだろうか。
本当に興味の尽きない作品だ。
現在(2023年7月24日)、「最強!野球団」はパート2、エピソード8までを配信中。
次回、エピソード9の配信は7月26日を予定。
文句なしに面白い。
とにかく野球ファンなら一度は見てもらいたい作品のひとつだ。
中でも球速重視の現在の野球界で球速120K台のボールと制球力でバッターを翻弄するユ・ヒグァンの投球にはぜひ、注目してほしい。
冒頭にも書いたが、一度は引退した韓国プロ野球界のレジェンドたちが再び、韓国プロ野球界の未来に挑むその姿に興奮するという想像をはるかに超えた感動的な作品だ。